“飾りたくなる耳かき”で癒しのひとときをお誂え

匠の耳かき

一見、インテリアの一部かのような優美な佇まいで、ひと際目を引く耳かき。引き出しの中や、ペン立ての中で存在感を消して収納されていた耳かきに、“飾る耳かき”としての役割を宿したのが、耳かき職人の加藤惠一さんです。

加藤さんが初めて耳かきを作り始めたのは、40年程前のこと。当時公務員として勤めていた市役所で、年末の大掃除をしていた時、事務机の片隅から柿羊羹の容器が出てきたそうです。竹製で、高級感のあるその容器を再活用しようと思いついたのが、耳かきでした。以後、趣味で耳かきを作っては、同僚などにプレゼントしていた加藤さん。

転機となったのは、東急ハンズ主催の「ハンズ大賞」にて「ハンズマインド賞」を受賞した作品の製作でした。このことをきっかけに、自身の秘められた発想力と創作意欲に目覚め、一念発起して公務員を退職。50歳の時に工房「匠の耳かき」を開き、耳かき職人としての活動を本格的にスタートしました。

耳かきに使用するのは煤竹。茅葺き屋根の旧家の囲炉裏で、200年ほどの間、燻された竹です。耳かきにした時の抜群の弾力、しなりは、この希少な竹であればこそ。

適度な大きさに割った竹を、小刀などを使い耳かきのさじ部分を曲げる段階まで削り、さじになる部分を水に付けて柔らかくします。ここが、耳かきのさじ部分になるのです。

次に固定した状態でさじ部分にライターの炎をあて、焦がさないようにして、曲げていきます。さじから柄にかけての間の部分を小刀で削った後、さらに何種類もの紙ヤスリで削り、最後にしなり具合などを確認しながら微調整を加え、全体を研磨したら完成です。

匠の耳かきの基本形は、長さ約10cmのスリムな扇形。先端の、最も細い部分は幅1mm。さじ部分の竹の厚みは、わずか0.3mm〜0.5mmという繊細さです。

この極薄に仕上げたさじが、しっかりと耳あかをキャッチ。竹ならではのなめらかな肌触りと心地よいしなりで、やさしく耳あかをかき出してくれるのです。

全て手作りのため、鞘型など1日に1本しか製作できない商品もあるほど、手間も時間もかかる耳かき。さらに、対面で販売する際には、その人にぴったりの1本に仕上げるために最終調整を加え、持った感触、耳のかき心地など、一人ひとりにベストフィットする感覚を追求します。

自分へのご褒美にはもちろん、大切な人へ、気の利いた贈り物としても人気の手作り耳かき。作り手のアイデアが光る多彩なラインナップの中から、おすすめの三選をご紹介します。

写真左は、元々かんざしとして使っていたものを、耳かきとしてリメイクした「アンティーク型」(7,700円)。中央の「普通型(8,800円)」は、竹の繊維の美しさが際立つ一本です。右の「鞘型Ⅰ」(22,000円)は、耳かきを収納するケースのつなぎ目が見えない程ぴったりに仕上げられていて、1日1本しか制作できない貴重な品です。

「道具としての耳かきの命ともいえる先端は、わずか3cmほどの部分。それ以外の部分には、美術品のような装飾を施して楽しんだり、工芸品をケースにリメイクしたり。遊び心や華やかさを演出することで、“飾れる耳かき”“見せたくなるような耳かき”を目指しています」と話す加藤さん。

道具としての機能美にこだわった3cmのさじ部分と、趣向を凝らした柄やケース。加藤さんの匠の技と美的センスが、ワンランク上の耳かきを生み出しているのです。

「目立たないけれど、生活になくてはならない存在の耳かき。だからこそ、見た目にも美しく、楽しみながら使ってもらえる道具にしたい」と話す加藤さん。

一人ひとりの要望に耳を傾け、オーダーメイド感覚で仕上げる一生ものの耳かき。癒しのひとときに欠かせない必須アイテムを、ぜひ一本誂えてみてはいかがでしょうか。

 

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