瓦に目を向けるだけで普段のまちがおもしろくなる。瓦好きが語る瓦の魅力。

WEBやイベントで瓦の魅力を発信する脇田佑希子さん

知識がないと屋根材としてしか受け止められない瓦ですが、

そんな瓦に「おもしろさ」や「美」を見出し、愛でてやまない「瓦好き」さんがいることをご存じでしょうか。

今回は、瓦好きさんのひとり、脇田佑希子さんにお話をうかがいました。

脇田さんは、名古屋のあまり知られていない魅力を発見する「大ナゴヤ大学」の先生や

「芸どころ・旅どころ・なごや」がテーマのイベント「やっとかめ文化祭」の企画運営を担う

「やっとかめ大使」として活躍し、WEBサイトやSNSで瓦の魅力について発信をしている方です。

脇田さんが瓦に開眼したのは2009年の頃。

なにげなく参加したまち歩きイベントで蟹江町の西之森神社を訪れ、

この神社の瓦には字が書かれている、とボランティアガイドの方に教えてもらったことが始まりです。

「それまでは瓦なんてグレーで同じ形のものが並んでいるだけだというぐらいの認識で、

皆さんと同じように気に留めたこともなかったんです。

でも、ボランティアの方に言われて瓦を見てみたら、西之森神社の『西』という字が入っていて。

特注で作っているのか、と驚きました」

「西之森神社の隣には蓮行寺という別のお寺があり、そこの瓦も見てみたらお寺の名の『蓮』の字が刻まれていたんです。

施設ごとに違っていて、住職さんや関係者が想いを込めて発注したのかな、と想像が膨らみました。

色々な瓦を知るうちに瓦の奥深さを感じ、ますますおもしろくなっていきました」

こうした出会いをきっかけに瓦の世界に触れることとなった脇田さんは、

瓦に興味を持ったことで、まちの見え方も変わったといいます。

「目を惹かれる瓦はお寺や神社が多いです。他には、古い商家もねらい目ですね。

昔からある酒蔵や和菓子屋など、伝統産業に関係するような建物は、屋号紋が入っていることがあります。

個人宅の場合は、苗字や家紋が刻まれていることもあります。家の印として特注で作ったんでしょうね」

瓦は1坪あたり約40~50枚を使用することが一般的。大きな家やお寺などになると、何万枚も必要な量産品です。

しかしその一方、職人の手で一つひとつ手作りされた、一点ものの瓦も存在します。

例えば名古屋市中川区の五之割神明社にある、盃と柄杓を持つ長髪姿の飾り瓦は、

中国から伝来した伝説上の生き物「猩々しょうじょう」を模したものだろうとのこと。

数々の瓦を見てきた脇田さんも、ここでしか目にしたことがない、という貴重な瓦です。

しかし、どのような経緯があってここにこの瓦が設置されているのかは全く不明だそう。

謎に包まれたオンリーワンの瓦なのです。

瓦好きさんには、鬼瓦やいらかの重なりに美しさを見出す方が多いそうです。

様々な瓦がある中で、脇田さんが最も好きなのは「軒丸瓦」。

「円形という制約がある中で、その中をどう表現するのかというところにおもしろみを感じます。

地域ごとのマンホールを撮影している人の感覚に近いのかも」とにっこり。

そんな瓦をこよなく愛する脇田さんに、瓦ならではの良さを聞いてみると

「粘土でできているので、粘土細工で色々造形できるところでしょうか」と答えてくれました。

事実、自由に細工ができることで特注品が作られ、個人や地域の特色を刻んだ瓦が現代にも残っています。

当時の人々は、そこに特別さを見出したのでしょう。

「将来家を建てるなら…あまり考えたことがないですが、瓦好きとして瓦にするかもしれないですね」

笑いながらも、瓦愛を覗かせてくれた脇田さん。

「やっとかめ文化祭」などで開催するまち歩き企画では、実際に散策をしながら瓦の魅力を解説する活動もしています。

参加者さんに瓦のイメージを尋ねると、

今まで瓦をじっくり見たことがなかった、どこに注目すればよいのかわからない、という反応が多いそうですが、

会の終わりには、一緒に歩くとおもしろさがわかった、と好転するとのこと。

中には、脇田さんの影響で瓦に目覚めた方もいるそうです。

何ということもない普段のまちが、たちまちおもしろいスポットに見えてくる瓦の不思議。

のんびり上を眺めながら、まちを散策してみてはいかがでしょうか。

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