三州瓦を支える人たち vol.11(マルスギ株式会社)

屋根にも足下にも。いつもそばで生活を守る、循環する瓦。

創業は1913(大正2)年。初代・杉浦亀次郎氏は、火鉢や煉炭コンロの製造をスタート。まだガスが普及していない時代の貴重な調理器具、熱源として人々の生活を支えました。

その後、昭和40年代に入ると、住宅需要の高まりなど時代の流れを敏感にキャッチし、瓦製造を始めます。焼成用のトンネル窯を設置し、本格的に瓦の製造・販売に踏み切ったことは、マルスギの大きな飛躍のきっかけに。分家する形で2代目の杉浦勝典氏が社長に就任しました。

トンネル窯の改良や増設・新設などを重ねながら、製造能力をぐんぐん伸ばしてきたマルスギ。現在は碧南と高浜に工場を持つ生産力、和風から洋風まであらゆるニーズをカバーする多彩なラインナップをはじめ、北は東北から南は九州まで全国に拠点を有するという優位性を最大限に活かした営業力、常に業界を牽引する技術・開発力など、総合力の強さで確固たる地位を築いています。

「マルスギ」の技術力を象徴する強みといえば、新製品である「イーグルエクサ マックス」に盛り込まれた“防水性能”、“防災”、“遮熱”という3つのキーワードです。

従来は4.0寸勾配が定番とされていた瓦において、2.0寸勾配に対応。現代のトレンドであるフラットに近い屋根にも対応できるというデザイン性の高さに加え、緩勾配でありながらも、雨水の逆流を防ぐ止水壁構造により、高い防水性能を実現。独自のアームロック機能により、従来製品同様の耐風性能に加え、横ズレも防ぐなど防災性に優れた製品を続々とリリースしています。

さらにマルスギの真骨頂といえば、遮熱瓦。三州瓦特有の熱を通し難いという断熱性能に加え、特殊な釉薬を施すことで、熱に変わりやすい赤外線を効率的に反射。屋内への熱気の影響を抑制し、屋根の表面温度と室内温度の上昇を和らげてくれます。

「三州瓦の魅力は、その機能性もさることながら、日本の町の風景をつくる美しさです。しかし残念ながら、今、日本らしい風景に出会える町が限りなく少なくなっています」と話すのは、3代目の英行さん。いろいろなスタイルの住宅が増え、多様化していますが、ぜひどこか一部分だけでも良いので、どこかに日本らしさを感じられる和の要素を取り入れてもらえたら嬉しい」と言葉を継ぎます。

日本国内での各地への発信力、受け継がれてきた技術力に加え、「マルスギ」の長い歴史を支えてきたのが、新たなニーズにいち早く着眼し、挑戦を厭わないチャレンジ欲と先見の明です。

約20年前、親日派が多く、日本文化や和風の建物への親しみが深い台湾に商機を見出した2代目の勝典さんは、業界に先駆けて台湾への販路を開拓。

日本製ならでは均整の取れた品質の高さをはじめ、海外の港へ商品が着いて現地へ引き渡す段階まで責任を持って付き添うなど、きめ細かいサービスによって信頼関係を構築。陶製ならではの風合いや感覚の齟齬を埋めるために、三州瓦の特性を理解してもらえるよう丁寧なやりとりを続けています。

「マルスギ」では、中国や台湾、韓国など海外との折衝をスムーズに進めるために、各国の外国籍のスタッフを雇用。公式ホームページでは、英語と中国語でも閲覧できるボタンを設けるなど、きめ細やかなサービスを実践している点も、海外への敬意の表れともいえるでしょう。

「自社の製品のみならず、三州瓦の魅力を体現している商品であれば、当社が窓口となって海外への販路を開いていきたい」と瓦文化の魅力発信を期する3代目社長の英行さん。

「屋根瓦は英語でroof tileと訳されます。でもいつか、KAWARAという日本固有の文化を表す言葉として、海外に浸透させていきたい」。作り手として、そして広め手として。端正で重厚感のある美しい姿、耐久性、メンテナンスフリーなど、日本が誇る優れた屋根材である三州瓦を、国を越えて、これからも発信し続けます。

BACK TO TOP