三州瓦を支える人たち Vol.13(株式会社ハイオーニー)

瓦屋根が成り立つには、脇役の役瓦も不可欠。主役を引き立て支える名脇役に。

「ハイオーニー」の創業は1984(昭和59)年。

取引先の工場の一角を間借りする形で、鬼瓦製造に特化した「岩本商店」として産声を上げました。

その後、1988(昭和63)年に自社工場を構え、株式会社として設立。

時代の流れに合わせて、鬼瓦から役瓦の専業メーカーへと移行しながら瓦業界を支えています。

後発ならではの“痒い所に手が届く”サービスにより、三州瓦業界の困った時の頼み綱となってきたハイオーニー。

安定供給、品質の維持、コスト削減、サービスの向上という製造業の原点に立ち返り、地に足のついた取り組みを続けています。

草創期は鬼瓦を製造していた「ハイオーニー」ですが、住宅様式の変化などにより、平板瓦とも呼ばれる洋瓦へのニーズが急上昇するという世相をキャッチ。

いち早く鬼瓦から洋瓦用の役瓦へとシフトチェンジを行いました。

洋瓦の役瓦を専門に製造するメーカーとして、新たな道を切り開いていきました。

幼い頃から、両親が夜遅くまで鬼瓦を作り、トランクに積み込んで朝早くから配達するという姿を間近に見てきたという2代目の岩本亮真さん。

「瓦産業が盛んだったこの地に生まれた私にとって、瓦はいつもそばにあるすごく身近な存在でした。だからこそ、特別な商売としてではなく、ごく自然に家業を継ぐという流れになったと思います」。

6年前に代表に就任したものの、瓦産業も自社も課題は山積。

そこで岩本さんがまず着手したのが社内改革でした。

圧倒的なリーダーシップを発揮した父の下、トップダウンの構図が定着していた組織を変え、管理者や幹部に可能な範囲で権限を移行し、チャレンジしやすい風土作りを徹底。

部下が自発的に課題解決や改善に取り組めるように、意見を出しやすい、ボトムアップの仕組みを構築しました。

また、生産管理から在庫管理まで一元化することで、取引先の在庫をリアルタイムに把握。

さらに生産計画に落とし込むことで、欠品や余分な生産を極力抑えて効率化を図り、並行して不良率やクレーム率の低下も強化しました。

「しかしどんな施策も、最終的には社員一人ひとりの意識や自覚を高めることでしか効力を発揮しません」と岩本さん。

自主性、挑戦欲を掻き立てることで、現場の士気を高めてきました。

大手メーカーからの信頼を獲得してきた優位性について問うと

「ただ目の前の頼まれごと、依頼ごとに必死に応えてきただけ。日に日に高まる瓦メーカー、ひいてはハウスメーカーからの要求に応えることで、私たちも引っ張られるように、自ずと技術が磨かれてきたという感じです」と話してくださいました。

2008(平成20)年からは全国共通役瓦という独自の製品製造・販売を手掛ける「ハイオーニー」。

瓦メーカーごとに形状が異なっていた役瓦を改良し、すべての主要メーカーの形状に対応した互換性のある役瓦の開発に成功しました。

この全国共通役瓦により、メーカーごとに対応する役瓦の在庫を抱えていた瓦問屋や施工業者の悩みを解消し、施工技術の平準化や資源の有効活用に貢献したのです。

しかし一方で、瓦メーカーの要求に応えるオーダーメイドの精神も、変わらず大切にしていきたいと語る岩本さん。

「取引先が扱い難い物、多品種小ロットの製品など、困った時に頼れる便利屋としての役割をこれからも担っていきたい」。

「私たちが作る役瓦は、決して主役にはなれないけれど、屋根が成り立つ上で欠かすことのできない脇役です。だからこそ私たち自身も、いざという時に頼りにされる、必要とされる存在であり続けたい」。

品質とサービスを日々磨くことこそが、自分たちの存在価値につながるはず、という思いを口にした岩本さん。「これからも実直に、屋根を支える名脇役として三州瓦の文化の一翼を担っていきます」。

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