店主の人生を変えた出会い。中世ルネサンスヨーロッパの魅力を発信するブックカフェ。
中世ルネサンスブックカフェ Tür テューア
教会、魔女、異端審問官、ドラゴン、妖精……。
キリスト教に基づいた独自の文化が花開いた中世~ルネサンス期のヨーロッパ。
その文化は現代日本にも大きな影響を与え、数多くの愛好家がファン活動にいそしんでいます。
名鉄高浜港駅から歩くこと約8分、
閑静な住宅街に位置する「中世ルネサンスブックカフェ Tür」の店主・鈴木さんも、中世ルネサンスに魅了されたひとり。
中世ルネサンスのヨーロッパを感じられる世界を共有、発信できる場を作りたいと考え、2023年4月にお店をオープンしました。
店を持つほどに強い想いを持つ鈴木さんが中世ルネサンスに興味を抱いた原点は、ファンタジー創作物。
ファンタジーな世界観のマンガやゲーム、イラストに親しむなか、
ファンタジーの源泉ってなんだろう?という疑問を抱くようになったそう。
その後美術について学んでいた大学時代、
鈴木さんが中世ルネサンスヨーロッパに深くのめり込むきっかけとなった運命の出会いを果たします。
それがヒエロニムス・ボスによる「快楽の園」という絵画作品。
「快楽の園」は1500年前後に制作されたヒエロニムス・ボスの代表作。
三連の祭壇画で、左側にはエデンの園、中央には現世・地上、右側には地獄が描かれている、寓意性に富んだ作品です。
鈴木さんはヒエロニムス・ボスとの出会いについて
「本当に衝撃でした。500年前の作品なのに繊細な描写で色も美しくて。
そういった文化について知識を得た今ヒエロニムス・ボスの作品を見ても、奥深さは群を抜いていると思います」と語ります。
それをきっかけに中世ルネサンス文化に熱中するようになった鈴木さん。
Türは、鈴木さんの「好き」を思う存分詰め込んだお店です。
ヨーロッパの古民家風にリフォームされた空間でいただけるカフェメニューのイチ押しは、
手づくりケーキとドリンクがセットになった「スイーツセット(900円)」。
ケーキ、ドリンクともに常時数種類が揃いますが、今回は「サンボケード」とテューアオリジナルブレンドをご紹介。
サンボケードという耳慣れないケーキの正体は、イギリスで生まれたチーズケーキの原型になったケーキ。
1390年頃のイギリスの料理本に掲載されていたレシピをもとに、鈴木さんがアレンジを加えて作り上げました。
他のフードやドリンクも含め、すべて当時に合った材料のみを使用して再現しています。
お味はというと、現代のチーズケーキよりも素朴で爽やかな印象。
イギリスを中心に広く使用されてきた歴史を持つハーブ、「エルダーフラワー(西洋ニワトコ)」を混ぜ込んでいるため、
一口食べると清涼感のある香りがふわりと鼻に抜けます。
クリームチーズをふんだんに使用したタルトフィリングは、甘みと酸味の中和が取れた軽やかな口当たり。
ドリンクのテューアオリジナルブレンドの別名は、「教皇が祝福せし悪魔のコーヒー」。
ローマ教皇クレメンス8世が、当時悪魔のものとされていたコーヒーを好んで飲んだという逸話をイメージして作られました。
苦みが少なく、飲みやすい一杯です。
店主のこだわりが光るのはカフェメニューだけではありません。
燭台風のランプ、ステンドグラスのようなランプシェードなどの調度品は、すべて鈴木さんが一つひとつセレクトしたもの。
他ではあまり見ることのない文化的な品々にうっとりと見とれます。
壁にかけられたカリグラフィーの作品も、古き良きヨーロッパの雰囲気を高めています。
カリグラフィーとは、活版印刷が開発されるよりも前、
写本を手書きで複製していた時代に培われた、文字を美しく見せるための技術です。
テューアに飾られているカリグラフィーの作品は、カリグラフィー教室の先生や生徒が作ったもの。
不定期で変更されるので、その変化も見どころのひとつです。
改めて鈴木さんに中世ルネサンスの魅力を伺うと、
「現代でごく普通に馴染んでいる文化も、キリスト教や北欧神話の影響を受けているものが多くあります。
例えば曜日の英語名も北欧神話の神々の名前が由来になっているんです」と教えてくれました。
「取っ付きにくい部分もあるかもしれませんが、ファンタジーゲームやマンガなど、
楽しい部分から知っていっていただけたらと思います」
鈴木さん自身、もともと一般的な勤め人だったものの、人生でしたいことをする、と決めて開業に漕ぎつけたそう。
「大変なこともあるけど、楽しいです」と語ってくれたその姿は、きらきらと輝いていました。
輝く店主と中世ルネサンスの魅力に触れに、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
中世ルネサンスにまつわるイベントも開催しているので、公式ホームページをチェックしてみてくださいね。