地域に寄り添って進化を続ける、瓦の魅力を体感できる美術館・図書館。

高浜市やきものの里 かわら美術館・図書館

「高浜市やきものの里 かわら美術館・図書館」は、全国的に見ても貴重な「瓦」がテーマの施設。

三州瓦はもちろん、瓦全般の歴史や魅力を学べると同時に、多様な文化に触れる場所として、高浜市を盛り上げています。

2023年4月に「かわら美術館」と「高浜市立図書館」が統合し、新たな複合文化施設となりました。

旧美術館の建物に移転した図書館の本館機能に加え、

市内3か所の公共施設内のサービスポイント、旧図書館である収蔵庫と、広域にまたがって運営しています。

「高浜市やきものの里かわら美術館」が開館したのは1995年10月のことです。

三州瓦の中心産地としての伝統や、瓦の歴史や造形美を様々な切り口から伝えていく場所として創設されました。

館の外観は、江戸時代に三河地方の特産品である味噌や味醂などをはじめ、

瓦も各地方へ運搬した「千石船」をモチーフにデザインされたものです。

隣接する森前公園では、海原に見立てた瓦の波や、鬼師(鬼瓦職人)が製作した瓦素材のオブジェや

海の生き物のレリーフなどを楽しむことができます。

また、美術館と高浜港駅・三河高浜駅をつなぐ散策路「鬼みち」も、国のウォーキング・トレイル事業として整備されました。

街のあちこちにある鬼瓦や飾り瓦を楽しみながら、散策できるようになっています。

美術館では、瓦に関する常設展示と、様々な分野の企画展が開催されています。

来館者を迎える1階の常設展示スペースでは、高浜市の指定文化財や行事、三州瓦の歴史などを資料とともに紹介。

愛知県西三河地方南部、高浜市を中心とした地域で生産される瓦は「三州瓦」と呼ばれ、

三河国(三州)で生産されていたことに由来する名称です。

その始まりは1700年頃の江戸時代中頃とされています。

三河国を流れる矢作川で採れる良質の粘土、海運による輸送の便、大都市との流通が盛んで消費地に恵まれたことにより、

一大産地として発展していきました。

3階の常設展示では、アジアを中心とした古代から現代までの瓦を年代順に展示。

瓦の歴史を資料とともに文様や意匠の変遷で紹介しています。

東アジアでは、瓦の起源は紀元前11世紀の中国と考えられ、後に朝鮮半島を経て、588年に日本に伝来。

瓦は高価であったため寺院などの特別な建築に用いられ、

戦国時代から安土桃山時代には城郭へ、江戸時代には城下町へと広がり、庶民にも普及していきました。

実際に三州瓦の製作で使用されていた道具なども展示されているほか、

手作業による瓦づくりの流れを写真パネルや映像で見ることもできます。

常設展示では、通常は屋根の上に設置されている瓦を上、下、横と様々な角度から間近に鑑賞することができます。

特におすすめの角度は、鬼瓦や飾り瓦と目が合う位置。

高い屋根の上から周囲ににらみを利かせる鬼瓦や飾り瓦をしゃがみこんで見上げると、より一層迫力を感じられます。

一方、瓦に限らず、幅広いテーマの企画展も実施しています。

これまでの観念を超えて、新しい視点やイメージをどれだけ提示できるかをポイントとし、

学芸員による調査・研究の成果発表や、美術館利用者のニーズ、

歴史的な記念事業などを踏まえながらテーマを策定しています。

また同時に、企画展のテーマを体感できる、ワークショップやショートフィルムの上映なども企画しています。

2022年度には『ゴー・トゥー・トラベル―芸術家たちの旅―』展を開催。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で旅に出ることが難しくなった時節柄、

コレクションを通じて世界各地を旅するような体験を提供できたら、という意図で企画されました。

キャプションには、展示会場から作品に描かれた場所への距離・交通アクセスを明記。

現実世界へリンクさせることで、鑑賞の楽しみ方を広げました。

また、最近特に人気が高かった展覧会は、

『ダ・ヴィンチ没後500年「夢の実現」展―ダ・ヴィンチがよみがえって高浜市にやってきます―』。

レオナルド・ダ・ヴィンチの残した絵画作品や、構想段階で終わった彫刻・建築作品をデジタル復元し、

当時の姿を実現するという内容でした。

著名な芸術家の作品と最新技術の融合により、大きな反響を呼びました。

今後は、新作を加えた作家の様々な側面を紹介する回顧展や、

同時期に同じモチーフやテーマを扱う作家同士を比較する展覧会などを開催してみたいとのこと。

ぜひ注目してみてください。

 

図書館は、本館と市内3か所のサービスポイントにそれぞれ特徴的な図書空間を設け、

ゆったりと本を楽しんだり、おはなし会に参加したりできる場を提供しています。

また、本館では、美術館の展覧会に合わせて選書した特設コーナーを設置。

展覧会を鑑賞した後、図書を通してさらに作品の背景や歴史を深掘りできる動線を作っています。

展覧会ごとに特設コーナーの内容も変化するため、合わせて楽しむことをおすすめしています。

「かわら美術館・図書館」は、地域との連携にも力を入れています。

そのひとつとして2023年度から試験的に始めたのが、

学校の授業で鬼師に依頼したい先生と鬼師をつなぐ「鬼師派遣プロジェクト」。

美術館・図書館と鬼師のネットワークを活かし、

高浜市や近隣の子どもたちが職人や瓦に触れる機会を増やすことを目的に企画されました。

やきもの体験の講師としての派遣が多く、

若い世代に広く瓦への関心を高めてもらう事業として、鬼師も積極的に取り組んでいるとのこと。

美術館・図書館で開催されるイベントでも、度々鬼師が講師をつとめているので、ぜひチェックしてみてください。

手づくり雑貨や身体にやさしい食べ物が並ぶ「ロハスガーデンマルシェ」の開催や、

三州瓦工業協同組合と高浜市商工会が行う「屋根の日」の事業に合わせたイベントの実施、

三州鬼師応援隊主催の「シン・鬼みちまつり」へのブース出展など、地域の方々に親しまれる場を定期的に設けています。

 

2024年2月には美術館と図書館の職員が共同で企画した舞台公演「銀のこもれび座」を開催予定。

地元ゲストを交えてのオリジナルプログラムを企画しています。

 

「みんなで美術館」「ささえる図書館」としてのそれぞれの自主性と役割を大切にし、

同時に地域の方々の活動支援や交流の場において連携し、

新たな文化・交流の輪を生み出すことを目標とする「かわら美術館・図書館」。

今後も連携や共創できることを探りながら、進化を続けます。

人々とともに文化を育む場として、日々発展する姿をその目で確かめてみてはいかがでしょうか。

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