瓦業界へ変革を起こす「職」と「食」の新たな体験施設。
KAWARANT(瓦んと)
2023年9月末。
「職」と「食」の体験施設「瓦んと」が長久手市にオープンしました。
運営を担うのは愛知県老舗屋根工事会社の「坪井利三郎商店」。
これまでは工事現場で活躍をしてきた坪井利三郎商店が、新たな世界へ活躍の場を広げます。
「瓦んと」の狙いは、瓦業界や建築業界、坪井利三郎商店自身の現状に風穴を開け、
瓦や職人が消費者にとって身近な存在となること。
瓦については、「高い、重い、過去のもの」という印象が広く知られてしまっていますが、
瓦も含め様々な屋根材を扱ってきた坪井利三郎商店だからこそ、
瓦が持つ高い機能性やデザイン性を発信したいと考えています。
職人についても、まだ知られていない魅力を世に知らしめたいという点は同じ。
建設業界の職人は「きつい・きたない・きけん」というイメージが先行し、
志す若者が減少した結果、29歳以下の比率が約10%にしか達していません。
固定観念とは異なる職人の仕事の魅力を伝えて、職人のイメージを良い方向に変える狙いがあります。
そのような実情を「変わらんと」、つまり「変わらなければ」という想いが込められています。
未来に向けて、瓦や家のイメージを変えるための挑戦の場なのです。
施設は職人たちの拠点である作業所をリノベーションして作られました。
その肝となっているのが「いぶしカフェ」。
「見えない職人のひとてま」をコンセプトにした和風カフェです。
店名はいぶし瓦の「いぶし」と、職人を思い起こさせるいぶし銀の「いぶし」から取られました。
目を引く大きな「むくりの瓦屋根」は、
「お客様を屋根の下に迎え入れ、最上のおもてなしを」と考える主の心情を表しています。
もちろん、屋根だけではなく内観にも日本の伝統的な工法が随所に盛り込まれ、和の情緒溢れたつくりに。
梁が剥き出しになった高さのある天井や、障子がはめ込まれた半円の窓。
巾木に瓦が使用されているのも、瓦んとならではのユニークネス。
職人が作り上げた、上質な空気の流れる心地よい空間に心が安らぎます。
もちろん飲食店メニューにもこだわりが。
シェフとして腕を振るうのは、京都の老舗料亭で修業を積んだ一流料理人。
いわば「食」の面での「職人」といえるシェフが、
これまでの経験を活かし、有名レストランにも負けない料理を提供しています。
最大の特徴は、すべてのメニューに燻製調味料を使用していること。
愛知県の間伐材を使用した燻製醤油や燻製オイルなど、厳選された調味料が料理に深みをもたらします。
ドリンク代のみでいただける「サービス・モーニング」は、ごはん、豚汁、おかず、いぶし塩の浅漬けが付くセット。
旨味豊かな豚汁は、酒粕を入れています。
アルコールだけを1時間かけてオーブンで飛ばしたもの。
スチームオーブンでじっくりと蒸し上げることで丁寧にアルコール分を飛ばした優しい味わいです。
最初はそのままいただき、次に燻製オイルを加えて、最後に燻製胡椒と
お客様自身の手で「ひと手間」加えていただき、味の変化を楽しむのがおすすめ。
ドリンク代に+330円でいただける「リッチ・モーニング」は、
「サービス・モーニング」に加えて、おまかせおかず3種盛り、サラダが付いたセット。
休みの日の贅沢なひと時にいかがでしょうか。
もちろんランチやデザートも見逃せません。
上質な黒毛牛を3時間かけて低温調理したローストビーフや、
燻製しょうゆのカタラーナと旬のフルーツを使ったパフェなどは絶品のひと言。
ご近所のお年寄りから、遠方に住む若い世代まで、幅広い層が舌鼓を打ちます。
「いぶしカフェ」の隣にあるのがオフィス棟。
打ち合わせなども可能なフリースペースからは職人が作業する様子を見ることができ、
「職」を身近に感じられるような仕掛けがなされています。
実際に使用される資材作りを見学できる場所は全国的に見てもとても貴重。
職人たちの手さばきを見ながら自宅についての相談をすれば、
より一層家への思い入れが深まるのではないでしょうか。
瓦や建築業界に新風を吹き込む「瓦んと」。
瓦や職人の魅力を体感してもらえるようなイベントも開催。
毎月「瓦祭り」と称して瓦葺き職人などの体験ができるメニューや瓦割りなどのイベントも開催しています。
瓦割体験エリアは道場の一角のようになっており、写真映えも◎。
イベントでは子どもも楽しめるクラフトのワークショップや、
住まいのリフォームをするときの見積もりの見方講座なども開催。
さらには、小さな子どもたちが職人と一緒に瓦葺きをする体験することは、
建築業界が身近な存在ということを、小さなころから感じられる貴重な場。
こうした体験を経た子どもが、将来職人として瓦屋根を葺いているかもしれません。
老舗瓦屋根会社のチャレンジと、こだわりの「食」「職」を体感してみてはいかがでしょうか。
次回は、瓦んとを運営する坪井利三郎商店についてご紹介します。