三州瓦を支える人たち vol.10(シャモット工場)

屋根にも足下にも。いつもそばで生活を守る、循環する瓦。

愛知県陶器瓦工業組合の心臓部として、リサイクルの循環を支えるシャモット工場。瓦製造の際に規格外となった瓦を粉砕し、再利用するための原材料を製造しています。

その興りは昭和60年にさかのぼリます。昨今のように、SDGsやサステナブルという考え方が声高に叫ばれていない時代。規格外として出荷ができない瓦たちは、廃棄品として埋め立てられるのが通例でした。

しかし当時の組合員らが「埋め立て地はいつか枯渇してしまう」、「業界の中で循環させる方法を考えなければ」と意を決し、日本初となるシャモット工場の設置を実現させました。

シャモット工場の佐々木さんによると「昭和60年に第一工場、平成5年に第二工場を建設していますが、非常に大規模で充実した設備なので、大きな費用を投じたと思います。今の時代では、これほどの投資に踏み切ることは簡単なことではないと思います」と語ります。

全国の陶器瓦産地へ目を向けても、組合規模でシャモット工場を設立、維持している例は他になく、産地内で瓦の循環に成功しているのは三州瓦のみ。数十年先の未来を見据えた先見の明により、持続可能な仕組みの構築という大いなる遺産を今の時代に遺してくれたのです。

現在、工場で作られているシャモットは全部で8種類。再利用する用途に合わせて、0.5mm以下、0〜2mm、0〜5mm、2〜5mm、2~10mm、5〜13mm、5〜20mm、0〜20mmのリサイクル製品を製造しています。

中でも主流となっているのが、0.5mm以下のシャモット。これは、再び瓦用の原料粘土へと還元される製品です。

日本全国で製造される瓦のうち、約70%のシェアを誇る三州瓦では、製造段階で年間およそ5万tもの規格外瓦が出ます。この5万tの規格外瓦のうち、8割にあたる4万tが0.5mm以下のシャモットとして、新しい瓦に生まれ変わります。

残りの1万t分については、さまざまな大きさに破砕され、時にはコンクリートブロックの骨材として、時にはガーデニング材として。また道路の舗装材や植樹帯の防草材、グラウンドの暗渠材など土木資材して活用。形を変えてシーンを変えて、幅広く役立てられています。

シャモットが、これほど多岐にわたって重用される背景には、シャモットならではのさまざまな特性が挙げられます。

例えば保水性があることから、舗装材にした際、通常のアスファルト舗装材に比べ10度以上涼しいヒートアイランド抑制効果が期待されます。ほかにも、排水性や摩擦性、軽量性などから水たまりが多いグラウンドの改修工事など、排水性を求められる場所の暗渠材としても効力を発揮します。

また、私たちの身近なところでもシャモットは大活躍。水はけやの良さや防草性、さらには赤茶色のアースカラーが人気で、植樹帯やガーデニング材としても活用の幅が広がっています。

さらに近年は、シャモット特有の適度なクッション性と支持力などから、乗馬クラブの馬場の改良材として採用されるなど、シャモットの優位性に着目したユニークな施工例も。愛知県陶器瓦工業組合では、環境基準をはじめとした安心・安全性を示すための厳しい検査を定期的に実施し、多様な用途に使用できるよう情報開示を行っています。

加えて軽量性、透水性、摩擦性、耐久性や支持力など、シャモットの特性をさまざまな見地から数値化。シャモット製品の価値の “見える化”を進めることで、規格外瓦の100%リサイクルへ向けて取り組みを強化しています。

組合事務局の野村さんは「三州瓦が日本の屋根を守り続けるためにも、限りある資源を有効に使い、循環させることは不可欠。SDGsの一翼を担える取り組みにしていきたい」と、瓦とシャモットが担う責務を話してくださいました。

屋根瓦や壁材として家や町の景観を守る三州瓦。そして形を変え、庭や道路、公共施設などさまざまなシーンで、足下の地面や地盤から、私たちの暮らしを守るシャモット。「資源を無駄にすることなく、いつもそばで生活を守る存在でありたい」それが、三州瓦に携わる人々の共通の思いなのです。

 

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