人に馴れ染み、共に成長する家づくりの在り方

イシハラスタイル

愛知県西尾市の工務店・イシハラスタイルは、

一級建築士のご夫婦がご提案から設計まで家づくりのすべてをお手伝いする地域密着型の工務店。

「住まい手と家が一緒に育っていけること」をコンセプトにひとつひとつ丁寧に作り上げていきます。

そのことをイシハラスタイルは「道具のような家」と表現。

「人は日々成長し、ライフスタイルがどんどん変わっていきます。

それに合わせて都度カスタマイズできたなら、愛着を持って住み続けてもらえると思って」と

代表の石原真さんは語ります。

そのような家をつくっていくのに最も大切なことは、「馴染むこと」です。

「『馴染なじむ』ということばの語源を調べたら、『む』と出てきました。

意味は、『しっくりと、とけあい、調和していく』こと。

イシハラスタイルはそんな関係を、人と家、土地と家のあいだに築ける建築をするために努めています。

馴染むからこそ生活の心地良さが生まれます。だから家づくりに必要な素材選びにとことんこだわります」と、

石原さんは語ります。

そのうえで重視するのは、「できるだけ地元のものを使うこと」と「不自然な人工物ではない、自然でピュアなものを使うこと」。

「素材の原料や、職人さんを地元から探すことで、土地に馴染みやすくなるし、

自然でピュアなものを使うことで、人々の生活へ馴染みやすくなる」と考えてのことです。

設計は屋根の架け方から想像することが大半なほど、屋根に重きを置かれています。

「建物を建てるということは、今後数十年〜百年近い風景を造ることです。

屋根は建築に付随したものですが、そこに素材が100%土である瓦を採用することで、

その土地に根づく背景、雰囲気に馴染みやすく、永く愛される存在になる」と石原さんは語ります。

こちらは住みやすさを重視した平屋の邸宅。

この家の雰囲気づくりにおいて、瓦屋根は非常に大きな役割を果たしました。

使用したのは野安株式会社のFS-40NⅡ 素焼き別注品。

平屋は、物理的に地面と屋根の距離が近くなるため、

素材を合わせることで、「地面の土」と「屋根瓦の土」との親和性の図りやすさを重視。

地面の土と屋根瓦の土、それぞれの素材が呼応しあい、この土地ならではの景観にしっくり馴染む佇まいをつくっています。

「家の中から自然風景を見たときに、『屋根に守られた安心感』を感じられるよう、屋根の形状を工夫しています。

日中の太陽光を遮る影の中から順光にある屋外を見ることで、心地よい陰影が生まれます。

さらに、素焼き瓦を選び、雨水が直線的に流れるのではなく、ジワリと流れ落ちていくような自然に委ねた納まりとしました」

と、石原さんはこだわった箇所を教えてくれました。

このように、瓦屋根は、住む人が自然の移ろいを感じ、安心感を享受できるための重要な要素となっているのです。

さらに、この家が建つ土地は平安時代より続く歴史があり、今も景観からそれを強く感じられます。

このような歴史ある地域は概ね保守的で、バランス良く建築する必要がありました。

素材には昔ながらの板や瓦を使い、その地域の石や植物などで装飾する。

その反面、造りは現代風に程よく開く。

こうした工夫を重ねたことで、違和感を生まず、かつ今の暮らしに合わせた使い勝手の良い仕上がりになったのです。

こちらはお寺の住職の依頼で建てた機能性重視のミニマルな納骨堂。

納骨堂は「使う」というより「訪れる」建築で、長く人に寄り添い、

手をかけて残していく存在と考え、最低でも100年以上は残るよう設計されたそうです。

設計のキーとなったのは永続性。

「新築時の竣工図などが残ってなくてもわかりやすいつくりにしています。

施工も、徐々に劣化していく接着剤やプラスチック類の使用を避けたり、『品番の無い建材』を使うことに留意しました。

建材が廃盤となったら部分的な取替えができず、修繕期に多額な費用が掛かります。

未来とのコミュニケーションを可能にし、より残しやすくしています」と石原さんは語ります。

また、住職から依頼時に伝えられた

「墓石に納骨するのがまだまだ一般的であるなか、納骨堂にお骨を納めることに違和感を覚えず、利用しやすいものにしたい。

華美なもの、装飾的なもの、多機能なものを造れば建築費もかさみ、利用料も高額になっていく。

それらもかんがみ、地元の方々が利用しやすいものにしたい」という要望もポイントになりました。

寺院にとって屋根の瓦は象徴的な存在です。

現代の住宅建築では、表面に釉薬を施した陶器瓦が採用されることも多く、耐汚性や色の多様さが魅力とされています。

一方で寺院建築では、古くから「いぶし瓦」が用いられてきました。

いぶす工程で生まれる銀色の炭素膜は、重厚感や不変性を宿す寺院らしい風合いをつくります。

今回の納骨堂では、住職からの「利用しやすく、地域に開かれた存在にしたい」という要望もあり、

石原さんは陶器瓦の一種で、釉薬を施さない陶器瓦「素焼き瓦」を提案。

素焼き瓦は、やわらかく温かな表情を持ち、時間とともに色を深めながら自然素材としての風合いを育てていきます。

覆いかかる欅の樹液や、雨の跡がすこしずつ刻まれる経年変化も、

この場所に寄り添う建築にふさわしいと判断されたそうです。

なお、今回使用した瓦は野安株式会社の和形の素焼き別注品。

寺院建築としての佇まいを保ちながら、地域の暮らしに開かれた存在であることを両立させています。

石原さんは日本の自然豊かな美しい景色を好み、この景観は守っていくべきだと考えています。

そのために「まずは、子供たちが過ごす保育園や幼稚園、小学校の屋根を瓦にしていきたい。

子供の成育環境の記憶は多大で将来の活動に大きく寄与する。

子供は未来の日本の文化や歴史、民俗のかけ橋なので、

日本の文化と歴史を支えてきた瓦を、あたりまえに提供したい」と語ります。

瓦はロングライフな素材です。厚みも重みもあるため、遮熱性、防音性は抜群。

また日照、雨、風、雪……四季のある日本で、自然にさらされるからこそのタフな経年変化も見られる美しさも兼ね備えています。

瓦屋根は機能的にも、景観的にも日本の建物に適しているのです。

そんな瓦屋根の街並みが、人々の暮らしを包む当たり前の風景として広がる未来を、石原さんは思い描いています。

BACK TO TOP