三州瓦を支える人たち vol.12(愛知県瓦高等職業訓練校)
三州瓦ブランドを支える、瓦屋根施工の技術と知識を継承する
将来の職人候補生や現役の職人が瓦について実践的な講義を受ける、瓦の職業訓練校をご存じでしょうか。
愛知県瓦高等職業訓練校は、全国に三つしかない瓦についての職業訓練校の一つです。その歴史は1963年までさかのぼります。
屋根施工に従事する事業所の組合が、職人の育成を掲げて設立。1970年に愛知県瓦協会が設立されたのを機に、1971年に愛知県瓦協会へ移管され、1978年に愛知県瓦高等職業訓練校となりました。
現在は52期生が学び、これまで全国の屋根施工業界に輩出した修了生は900名にも及びます。
在校生は主に愛知県内の屋根施工の事業所に在籍し、所属する事業所の一員として訓練校に通学。1年間にわたり、瓦屋根の施工に関する技術や知識をしっかりと身につけます。
訓練校は主に、普通訓練と短期訓練に大別されます。普通訓練生は「普通課程 建築外装系屋根施工科・ルーフワークコース」を履修。全国唯一の昼間制瓦高等職業訓練校として、1年間にわたり瓦屋根施工の知識や技術を習得します。
また短期訓練は瓦屋根基礎コース、本瓦葺技能コース、かわらぶき技能コース、瓦屋根工事技士コースなどが設置されており、それぞれのコースごとに訓練内容や訓練期間が定められています。
特に普通訓練では、高校を卒業したばかりの素人に対し、瓦に関する基礎的な知識から応用的な技術まで、1年間かけてみっちりと教え込むため、次世代を担う人材育成を課題として抱える屋根施工の事業所にとって重要な役割を担っています。
また、技術の習得はもちろん、瓦自体の性質や歴史的・文化的な背景、刻々と変わる施工に関する法律など、屋根施工に関連する知識をしっかりと学びます。
星野道人校長は「なかでも近年は、災害対策の観点から、屋根施工に関する施工ガイドラインに対しては常に注視する必要があります。知識を得ると同時に、屋根施工に従事する者としてのモチベーション、安全・安心な施工のために備えるべき意識の高さなどを身につけることができる点も当校ならでは」とその優位性を語ってくださいました。
加えて受講生らには、日本古来の文化を守るという重大な責務を担っているのだということも伝えているそうです。
「日本の町並みの中で、いぶし瓦のような伝統的な瓦を葺いた屋根が並ぶ風景は、日本人のアイデンティティのような存在です。その美しき文化を、ぜひ守っていただきたい」と話す星野校長。
「また同時に、瓦業界の動向や瓦メーカーのニーズに合わせた技術の習得も、訓練校の存在意義の一つです。いぶし瓦の継承とともに、洋風形式の平板瓦など、新時代に合わせた領域の強化も注力していかなければいけません」と解説を加えてくださいました。
履修生の多くは、家業として屋根施工に従事しているケースが多く、後継者候補が大半ですが、中には海外から来日し、技術と知識の習得に励む訓練生も。
日本の文化を世界へ。そして世界が認める瓦へ。訓練校で学んだ訓練生が文化の橋渡し役となり、日本生まれの瓦の美しさ、魅力を世界に向けて発信してくれる日も遠くないのかもしれません。
三州瓦の魅力が見直され、日本の町のあちこちに瓦屋根の風景が戻るためには、瓦自体のクオリティはもちろんのこと、確かな施工が鍵を握ります。
三州瓦のブランド力を高めるためにも、次世代の若き担い手たちへの期待が高まります。