自然の中から町の顔まで。神の使いに海、個性豊かな瓦たち。
鬼みち③ ―馬頭観音から三河高浜駅―
名鉄三河線で隣り合う駅同士の「高浜港駅」と「三河高浜駅」。
直線距離では約1.2kmとごく近所の2駅ですが、
この2駅の間には、少し遠回りをして瓦にまつわるスポットを巡る「鬼みち」というウォーキングコースが整備されています。
前回は「高浜港駅」から「高浜市やきものの里 かわら美術館」、
前々回は「高浜市やきものの里 かわら美術館」から「馬頭観音」のルートを歩きました。
約5kmの「鬼みち」も残りわずか。
今回は「馬頭観音」から、終点「三河高浜駅」を目指します。
馬頭観音を出発して正面に見えるのが「大山緑地」。
衣浦湾や高浜市の街を見渡せる高台に位置する大山緑地は、
3.8ヘクタールの広大な敷地を有する公園で、鬼瓦のモニュメントと陶管焼きの土管が来訪者を出迎えます。
手入れが行き届いた森林に囲まれ、マイナスイオンに癒されながら歩を進めると、
敷地内にはいたるところに瓦のモニュメントが。
遊歩道には、うさぎなど様々な絵が彫られた瓦が敷かれています。
さらにその脇には、塀に埋め込まれた瓦や、
屋根の上の飾り瓦を模したオブジェも。
陶管焼きの狛犬もかわいらしく、思わずパシャリ。
一見何の変哲もない公園の風景に瓦が溶け込み、三州ならではの香りを醸し出しています。
また、大山緑地で見逃せないのが陶管焼きの大だぬき。
1964年に建立された大だぬきは陶管製としては日本一の大きさで、高さ5.2m、胴回り8mという巨大さを誇ります。
足元から頭上を見上げれば、その大きさに圧倒されるかもしれません。
「八相縁起」も全て満たしている、縁起の良い大だぬきです。
そして大山緑地内でもうひとつの目玉スポットが、高浜の総氏神様「春日神社」。
詳細な創建年はわかっていませんが、記紀神話に登場する「四柱」にゆかりを持つ歴史ある神社です。
境内には旧高浜町の氏神様13社をお祀りしており、摂社・末社には特徴的な飾り瓦が葺かれています。
こちらは春日神社の神の使いである鹿。
足元には紅葉も表現されている、芸術性の高い飾り瓦です。
こちらは大きな葉団扇を手にする烏天狗。
一説によると天狗の由来は、仏教の守護神「迦楼羅天」が変化したものといわれています。
他には、亀に乗る浦島太郎や、鯉に乗る老人、波に揉まれる壺のようなものなどなど…。
個性豊かな飾り瓦、軒丸瓦が盛りだくさんです。
大山緑地公園を出ると、残す瓦スポットは一か所のみ。
終点「三河高浜駅」のロータリーにあるモニュメント、「瓦の庭『海』」です。
三州瓦を1万枚以上使用して制作されたこの作品を手がけたのは、造園家・作庭家として活躍する岡田憲久氏。
愛知県陶器瓦工業組合が、「三河の窯業展」の地元開催を記念して制作を依頼。
形の異なる瓦が組み合わさり、寄せては返す波を表現しています。
「海」は2002年に高浜市へ寄贈され、三河高浜駅の顔となっています。
「高浜港駅」から「三河高浜駅」までを繋ぐ「鬼みち」。
ご紹介した瓦以外にも、ここでしか出合うことのできない個性豊かな瓦をたくさん発見することができます。
瓦に満たされる約2時間の道のり。
ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。