三州瓦を支える人たち vol.1(三州野安)

vol.1

「作り手も使い手も心弾む、瓦の新たな魅力を発信」三州野安株式会社

「瓦というと“日本古来の和風の物”というイメージを抱かれるかもしれませんが、三州野安で製造している瓦の大半は洋風瓦です」と話すのは、三州野安の社長・岡部誠司さん。

1913(大正2)年創業。2010年には、三州瓦業界全体の安定とさらなる発展を目指し、3社が合併する形で「三州野安」と社名を改め、新たな100年の歴史を刻み始めました。三州野安では、受け継がれてきた匠の技を生かした伝統的な手仕事による瓦づくりと、効率化や品質の安定を実現するオートメーション化された機械製造の両輪により、伝統と未来をつないでいます。

岡部社長によると「強度と作業性のバランスが取れた優れた品質性、東日本へも西日本へも輸送がしやすい地の利、新たな製品にも果敢に挑む柔軟性など、様々な優位性を発揮してきた三州瓦は、日本の粘土瓦を牽引してきました」。

しかし、粘土瓦にとって逆風となったのが、度重なる大規模な地震災害。地震による崩壊家屋の映像がメディアを通じて繰り返し流れる内、いつしか粘土瓦に対する負のイメージが拡散してしまいました。

岡部社長は語ります。「近年の基準に則って正しく建てられた家屋であれば、本来、瓦は特別なメンテナンスをしなくても50年、60年にわたり家を守ってくれる頼りになる存在です」。

「他の屋根材に比べて、色落ちなどの劣化が極めて少なく、ほとんど塗り替えが不要。ヒビや割れなど不具合が生じた場合にも、数枚単位の取り替えのみで済むケースが多く、足場を組んだ大掛かりな修繕の心配もいりません」。正しい製法に基づいて製造された瓦の安全性は、データ的にも検証されているそうです。

さらに三州野安では、技術革新も加速。耐震性をはじめ、軽量化、高強度、耐風性、断熱性、耐雨性、緩勾配かんこうばい対応など、高機能の瓦製品を続々と輩出。快適な暮らしを長く支える比類ない屋根材として、大手ハウスメーカーや、海外王室の王宮に使われるなど、国内外で高い評価を得ています。

また、S形瓦や平板瓦といった形状が多様化。南仏風の明るい色味から、グレーやブラックなどといったシックな色合いまで、住宅デザインのトレンドに合わせたカラーバリエーションも多彩に。屋根と一体化するように太陽電池を設置でき、太陽光発電をスマートに取り入れることができるシリーズも人気が高まっています。

和、洋など住宅のテイストを選ばない優れたデザイン性と、瓦特有の高級感を備えた三州野安のラインナップ。色あせることのない美しさをたたえた瓦は、時を超えて町と調和し、景観に彩りを添えてくれるでしょう。

三州野安では、新たに「瓦猫プロジェクト」を開始。2021年には商品化を実現し、丸くシンプルなフォルムの「かまくら」をはじめ、現在3種類があります。「普段の暮らしの中で、なかなか手に触れる機会が少ない瓦の手触り、美しさ、魅力をもっと身近に感じてほしい」と岡部社長。シンプルなデザイン、瓦ならではの上品な質感の猫ハウスは、洗練されたインテリアとも調和します。

「このプロジェクトをきっかけに、瓦が持つ多様な表情、可能性を知っていただけたら嬉しいです。そして、作り手もワクワクし、楽しみながら製造できる商品づくりに、今後も積極的に挑戦していきたいです」。作り手も使い手も心弾む、新しい瓦との出会いが広がりそうです。

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